2019年03月25日

オリンピック関連登録商標の違法ライセンス疑惑(5):2019年3月20日参院法務委員会での小川議員の質疑に対する政府答弁を分析する(その3)

 2019年3月20日の参院法務委員会での、小川敏夫議員(立憲民主党)による「JOCによる商標法31条の禁止規定に違反した通常使用権許諾について」と題した国会質疑は、わずか20分の短時間でしたが、極めて重要な事項が明らかとなりました↓
https://www.youtube.com/watch?v=c-piTW48Uio(51:15〜1:15:30)
https://twitter.com/OgawaToshioMP/status/1108238785207132160

〔前回迄と今回の分析内容〕
前回
 小川議員は、一貫して、以下を政府に問いただしました:
 「組織委員会の登録商標であるエンブレム等のライセンス契約は
  違法ではないか」

 政府は、組織委員会の登録商標であるエンブレム等のライセンス契約は
 合法でであるとの立場で、以下の回答をしました。
A.組織委員会から、
  スポンサー企業等は適切な契約の下で合法的に使用している
  との報告を受けている。

B.政府は、組織委員会の報告の内容に問題はないと考えている。

C.組織委員会とスポンサー企業等との
  登録商標であるエンブレム等のライセンス契約が合法である
  と考える理由
  @商標法に基づくライセンス契約ではなく、
   著作法・民法に基づくライセンス契約である。
  A商標法に基づくライセンス契約ではなく、
   商標法に基づく差止請求権不行使の契約である。

D.本件ライセンス契約は、民間団体と民間企業の私契約の問題であり、  
  政府として特段深く関与すべき問題ではないという認識である。

 政府の回答Cが極めて拙劣で、
 当該ライセンス契約が合法である理由には全くなっていないとして
 小川議員がどのように論破したかを説明しましたが、このことから、
 「ご飯論法」答弁でである、
 回答Aの組織委員会が合法的に使用しているとの報告内容と、
 回答Bの政府がその報告内容に問題がないという判断とは、
 根拠のない間違ったものであることも明らかになりました。

 回答Dは、政府がIOCが進めるライセンスビジネスをサポートする
 重要なプレイヤーであることと整合せず、IOCとの契約上、
 組織委員会の登録商標であるエンブレム等のライセンス契約は、
 政府として特段深く関与しなければならない問題ですから、
 一体、何を言ってるのか、ということになります。

今回
 小川議員は、質疑の最後の大詰めで、上記の質問に加えて、
 政府が2019年3月1日に閣議決定した、
 商標法31条1項柱書のライセンス禁止条項を削除する法改正案は、
 組織委員会の違法ライセンスを合法化する後付け改正であるとして、
 政府答弁者として同席した経産省の米村総務部長に見解を求めました。

 そのときの米村総務部長の答弁が以下の内容です。

E.現行商標上の扱いでございますけども、仰っているところで、
  許諾をすることができない、となっているわけですが、
  この効果といたしましては、商標法上の保護が受けられない、
  ということになりますので、
  まあ何らかいろんな工夫を皆さんされてるということは、
  お話は聞いているところでございます。

  今回の法律を国会に今お出ししているところでがございまして、
  これは、例えば、地域の振興ですとか、いろんな場面で、
  公益な著名な商標について、例えば、マグカップに付けたりですとか、
  いろんな所で広めたいという
  ということについてのニーズがございますので、
  これについては表立ってできるようにということで、
  いろんなニーズに踏まえまして、
  現在、法律を提出しているということでございます。

 小川議員が回答Eを引き出したことは重要です。、
 
 結論をいうと、組織委員会の違法ライセンスを、
 回答A〜Cは認めていませんが、回答Eは認めており、
 政府答弁が完全に食い違っており、
 回答A〜Cが誤りであるのに対して、
 回答Eは正しいということです。

 その理由を以下に説明します。
 
〔回答Dの分析(その1)〕

現行の商標法31条1項について
 現行の商標法31条1項の内容は以下の通りです:
 「商標権者は、
  その商標権について他人に通常使用権を許諾することができる。
  ただし、
  第四条第二項に規定する商標登録出願に係る商標権については、
  この限りでない。」

 この但書の部分は、
 商標法4条2項に該当して登録された登録商標(以下「4条2項登録商標」)
 はライセンスできないことを意味しており、
 4条2項登録商標には、非営利公益団体の著名商標が該当し、
 特許庁の商標審査基準によれば、非営利公益団体には、
 IOCファミリー(IOC・JOC・組織委員会)、
 公益団体(大学・地方自治体・NPO法人等)
 が含まれます。

 従って、IOCファミリーのオリンピック関連登録商標の多くは
 4条2項登録商標に該当するライセンスができない登録商標である
 ということになるわけです。

回答Dによる現行の商標法31条1項の解釈
 米村総務部長は、現行の商標法31条1項の内容について、
 以下のように説明しています:
 「現行商標上の扱いでございますけども、仰っているところで、
  許諾をすることができない、となっているわけですが、
  この効果といたしましては、商標法上の保護が受けられない、
  ということになりますので、
  まあ何らかいろんな工夫を皆さんされてるということは、
  お話は聞いているところでございます。」

 この説明から、政府は以下を認めたことになります。

@4条2項登録商標は「許諾できない」(ライセンスできない)。

 これは自動的に、
 IOCファミリーのオリンピック関連の4条2項登録商標は、
 ライセンスできないことを政府が自認したことを意味し、
 IOCファミリーがしているライセンス契約が違法であることを、
 直接的に認めていることになります(回答A〜Cと全く食い違う)。
 
A4条2項登録商標をライセンスしても「商標法上の効果が得られない」。

 ライセンスの効果は、
 ライセンシーに登録商標の使用権を認めることですから、
 政府は、IOCファミリーがスポンサー企業に、
 オリンピック関連の4条2項登録商標をライセンスしても、
 スポンサー企業には使用権が発生しないことを認めたことになります。

 現状、スポンサー企業が、
 オリンピック関連の4条2項登録商標を使用している
 (正当な使用権を有さずに使用している)実態に鑑みれば、
 スポンサー企業が商標権侵害罪の状態にあることを
 政府は認めたことになります。

B現行の商標法31条1項の下で、
 4条2項登録商標のライセンスが禁じられているため、
 「何らかいろんな工夫を皆さんされてる」。

 米村総務部長が言う「皆さん」とは、
 閣議決定された法改正案の趣旨を考慮すれば、
 公益団体(大学・地方自治体・NPO法人等)を意味します。

 即ち、公益団体(大学・地方自治体・NPO法人等)は、
 4条2項登録商標のライセンスが禁じられているため、
 違法ライセンスにならないように「いろんな工夫」をしている
 わけです。

もし、回答Cのような手段があれば、
 「皆さん」は著作権法や民法に基づいてライセンスできると、
 特許庁が指導すれば、「いろんな工夫」などする必要はないのですが、
 特許庁がそのようなことをいうわけがなく、
 「皆さん」が行っている「いろんな工夫」」には、
 著作権法や民法に基づいてライセンスすることなどは含まれていません
 (恐ろしくて、そんなことできる訳がありません)。
 
******

 ここで注意していただきたいのは、、
 経産省を代表する(特許庁の総務部長でもある)米村総務部長
 による回答Dが正しく、
 文科省を代表する白須賀大臣政務官と
 内閣官房を代表する十時内閣審議官による回答A〜Cが誤りである
 ということです。

 先のブログで報告した、
 「特許庁の官僚は、口が裂けても、上記の政府の回答をすることはあるまい。」(先のブログでは上記の政府答弁とは回答Cのことです)
 と書きましたが、その通りであることがわかります。

******
 
 米村総務部長の説明からは以下のこともよく理解できます。

 公益団体(大学・地方自治体・NPO法人等)は、従前から、
 4条2項登録商標のライセンスが禁じられていることを
 よく知っていて、特許庁の指導もあって、実際、
 「皆さん」はまさに「何らかいろんな工夫」をしてきており、
 その中で、法改正についても真剣に議論してきました。

 従って、米村総務部長の実態認識は正しいのです。

 その一方で、IOCファミリーは、裸の王様状態で、
 現行の商標法31条1項但書のライセンス禁止条項を一顧だにせず、
 堂々と、少なくとも10年以上に及ぶ長期間にわたり、
 大規模な違法が疑われるライセンスをしてきたということになります。

 小川議員は国会の質疑で、このことを以下のように指摘します
 「何かあたりまえのごとくね、
  違法か合法かの認識もないまま協賛金もらって、
  協賛企業には、登録商標を使わせてやるよ、
  というのが、実際に行われている。」
 「だけど、役所の立場上、それが違法だと言えないから、
  四の五の言っているだじゃないですか?」

 「私、オリンピックを邪魔する気はないしね、
  ケチ付けるつもりはないんだけど、
  しかし、フェアなオリンピックやるような団体がね、
  明らかに法律違反をね、やってる、これはおかしいじゃないか、
  ということで指摘したわけです。

  しかも、この明文の規定に違反している
  登録した商標エンブレムを使わしてはいけないと商標法に書いてある、
  それを今堂々とね、協賛企業に使わせている。」

******

 次回は、商標法31条1項但書のライセンス禁止条項を丸ごと削除する
 法改正案が、小川議員が指摘するように、
 IOCファミリーの違法ライセンスを解消するための後付けである
 疑いが濃厚であることについて解説します。

 試しに、法改正案のどこに商標法31条1項の改正案が記載されているか
 探してみてください。本当にひっそりと説明されています。
https://www.meti.go.jp/press/2018/03/20190301004/20190301004.html
posted by Dausuke SHIBA at 10:42| Comment(0) | TrackBack(0) | 五輪
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