2019年03月23日

オリンピック関連登録商標の違法ライセンス疑惑(3):2019年3月20日参院法務委員会での小川議員の質疑に対する政府答弁を分析する(その1)

 2019年3月20日の参院法務委員会での、小川敏夫議員(立憲民主党)による「JOCによる商標法31条の禁止規定に違反した通常使用権許諾について」と題した国会質疑は、わずか20分の短時間でしたが、極めて重要な事項が明らかとなりました↓
https://www.youtube.com/watch?v=c-piTW48Uio(51:15〜1:15:30)
https://twitter.com/OgawaToshioMP/status/1108238785207132160

〔小川議員の質問〕 

 一貫して、以下を政府に問いただしました:
 「組織委員会の登録商標であるエンブレム等のライセンス契約は
  違法ではないか」

〔政府答弁〕
 白須賀政務官と十時審議官による政府答弁の内容は以下の通りです。
A.組織委員会から、
  スポンサー企業等は適切な契約の下で合法的に使用している
  との報告を受けている。

B.政府は、組織委員会の報告の内容に問題はないと考えている。

C.組織委員会とスポンサー企業等との
  登録商標であるエンブレム等のライセンス契約が合法である
  と考える理由
 @商標法に基づくライセンス契約ではなく、
  著作法・民法に基づくライセンス契約である。
 A商標法に基づくライセンス契約ではなく、
  商標法に基づく差止請求権不行使の契約である。

〔政府答弁の妥当性〕
理由C@について
 組織委員会の登録商標であるエンブレムの使用「実態」に対して、
 小川議員の質問と同趣旨の「命題」を立て、
 小川議員と政府の回答をを整理して、
 それぞれの回妥当性を「講評」した結果を表にまとめました。

 「実態」の説明は、以下をイメージされると良いと思います↓
https://www.asahi.com/articles/ASL9M5TPLL9MUTIL05D.html
採点.jpg
 上記「命題」に対して、
 小川議員の回答は正解(〇)で、政府の回答は誤答(×)です。

 まともな知的財産の専門家(弁理士、弁護士、企業知財部)であれば、
 上記「命題」に対して政府の回答をすることはありえません
 (検察官・裁判官であられた小川議員が、
  政府の回答をよしとすることなど絶対にありえません)。

 特に、弁理士は、特許庁が実施する弁理士試験を受けていますが、
 弁理士試験の論文試験では、小川議員の質問のような事例問題:
 「登録商標であるオリンピックエンブレムをライセンスすることの
  適法性について述べよ」
 について論述させることは十分にあり得ます。

 もし、受験生が政府の回答を結論とする論述をしたら、
 その受験生は不合格になるでしょう。

 そのくらい、政府の回答は拙劣と思います。

 ******

 十時審議官は、「商標法の解釈について、・・・
 内閣官房の所管するところではございません」といいますが、
 小川議員が登録商標のライセンス禁止条項の質問をする
 ことになっているのだから、 
 特許庁の官僚を同席させて答弁させてもよかったし、
 最後に答弁した特許庁の総務部長でもある米村総務部長に
 回答させてもよかったのです。

 特許庁の官僚は、口が裂けても、
 上記の政府の回答をすることはないと思います。 

理由CAについて
 この理由CAについては、小川議員が完璧に論破しています。

 基本は、登録商標は使用権を有さなければ使用できない、という点です。

 上記の表の使用の「実態」で、車の所有者は、
 登録商標エンブレムを使用していることになるので、
 車の所有者は、
 商標権者とライセンス契約をして、
  登録商標の使用権を有して合法的に使用しているか、
 商標権者に無断で使用権なしに違法に使用しているか、
 のどちらかです。

 政府は、車の所有者は、
 組織委員会とライセンス(使用許諾)契約をしたわけではなく、
 車の所有者が登録商標を使用しても、
 商標権者が差止請求をしないでそのまま放置する
 (差止請求権不行使)契約をしたのだと回答しました。

 小川議員は、この政府の回答に対して、
@.ライセンス契約とは、もともと、
  登録商標の使用に対して、商標権者から差止請求権を受けない
  という契約であるから、政府の言う差止請求権不行使契約は、
  ライセンス契約そのものであろうと説明し、さらに、

A.もし、商標権者が使用許諾を本当にしていないのなら、
  車の所有者は、使用権なしに登録商標を使用することになり、
  それは商標権侵害で、商標権侵害罪により懲役10年以下の刑罰となる
  刑事事件になってしまう、と説明し、

  政府の説明は、おかしいだけでなく脱法的説明だと論破しました。

 ******

 中小企業の間で、諸々の事情で、
 差止請求権不行使契約をする場合がなくはないですが、
 それは、ほとんど社会の表にはでない小規模な事業において、
 当事者だけが了解しているような状況であることが多いといえます。

 従って、組織委員会とスポンサー企業との間で、
 社会的に知れ渡る大規模な事業を前提として、
 小川議員が説明するようなおかしな説明になってしまう
 差止請求権不行使契約をわざわざ締結してしまえば、
 それは脱法的と言われても仕方がありません。

 従って、もし、組織委員会とスポンサー企業との間で、本当に、
 合意の上で差止請求権不行使契約を締結して、
 スポンサー企業の商標権侵害を黙認したとしたら、
 それは共謀罪に該当しえる大きなリスクを抱えることになります。

 組織委員会とスポンサー契約をするような大企業の知的財産部が、
 このようなリスクを前提に、
 差止請求権不行使契約を進めることはありません、
 (社内で大きな問題になり知財部長が左遷されるのがオチです)。

 ******

 2019年12月27日に行われた商標制度小委員会で、
 特定の登録商標のライセンスを禁じる商標法31条1項柱書について
 議論された際に、
 「公益著名商標を第三者にライセンスしても
  商標法上の効力は発生いたしませんが、
  やむを得ず当事者間で差止請求権の不行使契約等を結ぶことにより、
  実質的に使用権を許諾したかのような状態とするケースがございます
  が、これには問題があるのではないかと懸念する声がございます。」
 との当然の指摘がなされています。

 以上を考慮すれば政府が説明する上記理由CAが、
 ほとんど箸にも棒にもかからない拙劣なものであることがよくわかります。

 ******

 以上のように、政府の回答Cが極めて拙劣で、
 組織委員会の登録商標エンブレム等のライセンス契約が
 合法である理由には全くなっていないことを説明しましたが、
 このことから、
 回答Aの組織委員会が合法的に使用しているとの報告内容と、
 回答Bの政府がその報告内容に問題がないという判断とは、
 根拠のない間違ったものであることになります。
 
〔違法ライセンス問題が不正統計問題と
 大きく異なる点〕

 不正統計問題では、
 不正疑惑作業が役所内の役人間の情報交換に基づいており、
 外部からは見ることが出来ないため、
 焦点となる期間について記載した文書から推測した状況証拠だけで、
 質問者側が立証しなければならないのに対して、

 違法ライセンス問題では、
 @誰もが日常みることができる登録商標の使用実態と、
 A商標法のわずか2つの条項の関係とその効果だけで、
 質問者側が、問題の本質をロジカルに立証できてしまい、
 被疑者側が、その反証をしなければならず、さらに、
 反証はほぼ不可能という点が大きく異なります。

 そのため、不正統計問題では、
 状況証拠を限りなくウヤムヤにするために、
 政府による、質問に直接答えない「ご飯論法」が有効でしたが、
 違法ライセンス問題では、
 「ご飯論法」(政府の回答A及びB)が全く通じません。

 実際、小川議員の質疑では、
 小川議員が、登録商標エンブレムのライセンスの違法性を、
 @A以外には何も文書を用いず立証してしまったのに対して、
 政府は全く反証することができなかったことは明らかです。

〔政府と組織委員会は
 合法性を主張し続けるのを止めたらどうか〕

 上述したように、今回の政府の答弁だけでも、
 知的財産の専門家からみれば、聞くに堪えない拙劣な回答であり、
 これ以上おかしな合法性の主張をすれば、
 ますますライセンス契約の違法性が顕在化し、
 オリンピック関連登録商標のブランド価値を棄損し、
 
 ライセンスビジネス推進が記載されるオリンピック憲章遵守と
 アンブッシュマーケティング対策を完備のための法的側面に関する
 内閣官房と通産省による、IOCに対する政府保証と、
 その政府保証を前提とする開催都市契約に違反することになり、

 IOCとの関係が拗れれば、
 東京オリンピックの中止も現実味を帯びることになり、
 我国の国益を決定的に損なうことになります。

 政府と組織委員会は、現状の違法性を認め、
 違法性を認めた企業が通常行うように、
 登録商標エンブレム等のライセンス推進を公表するHPを閉鎖し、
 登録商標エンブレム等の使用を中止し、
 正当な第三者委員会を立てて、取るべき責任は取った上で、
 関係者と協議することを検討するべきではないでしょうか。
posted by Dausuke SHIBA at 15:05| Comment(0) | TrackBack(0) | 五輪
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