2019年03月16日

オリンピック関連登録商標の違法ライセンス疑惑(1):弁理士会誌「パテント」への論文掲載の報告

 このたび、題記に関する私の論文
 「オリンピック知財のライセンス活動の商標法上の位置付け」が
 弁理士会誌「パテント」2019年3月号に掲載されましたので報告します。

 弁理士会員の皆様には3月18日の週には配送されます。

 弁理士会のHPでの公開は5月になりそうですが、
 非弁理士会員の方で「パテント」2019年3月号の購入をご希望の方はこちらからお求め下さい↓
https://www.jpaa.or.jp/info/monthly_patent/

《論文の解説》
 IOC、JOC及び組織委員会(以下「IOCファミリー」)が、
 我国の商標制度を利用して、
 オリンピック関連のロゴ、スローガン等につき下記登録商標:
登録商標.jpg
 を始めとする多くの商標登録を取得し、
 スポンサー企業、東京都を始めとする地方自治体等に対して
 その使用をライセンスしつつ巨額の協賛金を集め、商標権に基づき
 アンブッシュマーケティング対策を公然と展開していることは、
 当のIOCファミリー自身がホームページ等で公表しているところです。
 @オリンピック憲章規則7.4
 AJOCのHP
 B組織委員会のHP
 C大会ブランド保護基準
 D友利昴「オリンピックvs便乗商法」(作品社、2018年11月20日初版)

 我国の商標法には、非営利公益団体が使用する著名商標について、
 ●非営利公益団体以外の他者に登録させない代わりに(商標法4条1項6号、4条2項)、
 ●非営利公益団体に登録された場合は他者への譲渡及びライセンスを禁止する(商標法24条の2第2項、30条1項但書、31条1項但書)
 という世界に例をみない制度が組み込まれています。

 上記制度は、
 非営利公益団体等の権威及び国際信義が化体した著名商標を尊重し手厚く保護する一方で、
 他者へのライセンス等で権威及び国際信義を棄損させないようにすることを趣旨としています。

 しかるに、非営利公益団体であるIOCファミリーは、
 上記制度を利用して独占的に自己の著名商標を登録する一方で、
 上記制度で禁止されている他者へのライセンスを公然としており、
 大規模な違法ライセンス活動をしていることが疑われます。

 かかる登録商標について違法ライセンスをすると、
 ●ライセンス契約は無効とされ(民法90条)、
 ●違法ライセンスを受けたライセンシーは使用権原なく登録商標を使用することになり(商標法25条)、
 ●商標権侵害罪の状態に置かれてしまいます(商標法78条)。

 また、過去20年の間になされた大阪市及び東京都による3回の夏季オリンピック招致時に、
 政府からIOCに提出した法的側面に関する政府保証において、
 上記ライセンス禁止条項については一切言及されていません。
 E東京都のHP(50-51頁)
 即ち、我国では、上記ライセンス禁止条項が一顧だにされないまま、
 IOCファミリーによる違法が疑われるライセンス活動が、
 長期間にわたり公然と大規模に行われているといえます。

《論文投稿後の動き》
 以上の目立つ状況がIOCファミリーによって大っぴらに展開される一方、
 以下の不可解な動きが、
 論文投稿(2018年11月16日)後にひっそりと進行しています。

●昨年末(2018年12月27日)に突然、
 「産業構造審議会知的財産分科会商標制度小委員会」にて、
 上記ライセンス禁止条項を削除する法改正論議が公表されましたが、
 有識者が当然に知っていなければならない
 違法が疑われるIOCファミリーによるライセンス活動について一切討議されないまま、
 IOCファミリーとは規模の次元が全く異なる大学・NPOを専ら想定して、
 ライセンス禁止条項を削除しても権威・国際信義尊重の制度趣旨を損なうことはない、という不自然な議論がなされています。
 F第4回議事録

●つい最近ですが、2019年3月1日付で、
 上記ライセンス禁止条項を削除する改正法案が、
 閣議決定され、今国会(第198国会)で提出されることになっています。
 G経済産業省ニュースリリース
 H議案審議経過情報
 経産省ニュースリリースでは、
 「特許法等の一部を改正する法律案」中の何と「その他」項目に
 商標法31条1項但書削除案がひっそりと置かれています。

 この法改正案が成立すれば、IOCファミリーによるライセンス活動は、
 改正法施行以降は大学・NPOもろとも合法化されますが、
 法律不遡及の原則により、
 改正法施行前のライセンス活動は違法が疑われるままです。

 IOCファミリーの違法が疑われるライセンス活動について一切議論しなかった、ただ1回の商標制度小委員会の議論だけに基づき、
 大学・NPO法人をダシにして、
 IOCファミリーのライセンス活動を合法化するような改正法を、
 パブリックコメントも募集しないままひっそりと通すことについて、
 今国会で慎重に審議すべきでしょう。 

《知的財産制度に関わる皆様へ》
 かかる現状を放置すれば、
 東京都はIOCと締結した政府保証を前提とする開催都市契約に違反することになり、
 我国の法治国家としての国際的信用が損なわれ、
 現に巨額の税金が注ぎ込まれた東京オリンピックを中心に回る我国経済に対する不測の悪影響が懸念されます。

 我国の開かれた未来を実感させてくれた1964年東京オリンピックを経験した私は、2020年東京オリンピックの成功を祈念していますが、
 一弁理士に過ぎない私にできることは、
 かかる現状について問題提起することだけであり、
 これをどのように解決すべきかは手に余るところです。

 つきましては、皆さまそれぞれの立場におかれまして、
 本論文が指摘する問題をご考察いただき、
 問題解決に向けて叡智を結集していただくことを強く希望しております。

 なお、本問題の最新の動きについては、
 折を見てブログ等でコメントしていきたいと思います。
posted by Dausuke SHIBA at 10:02| Comment(0) | TrackBack(0) | 五輪
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