2018年05月20日

『五輪』が危ない(2):用語の解説

 先のブログで、
 IOCが日本語『五輪』を商標登録出願をして商標権を取得し、
 IOCの自称アンブッシュマーケティング防止の下に、
 第三者の自由にできた『五輪』の使用を制限することは、

 アーノルド・シュワルツェネッガー氏が、
 『シュワちゃん』を商標登録出願をして商標権を取得し、
 ファンが自由にできた『シュワちゃん』の使用を制限する
 のと同じことで、

 商標制度上は出願商標は普通名称であり登録はされず、
 このような出願行為は徒に出願人のブランド価値を貶めるものだ、
 と解説しました。

 なお、アーノルド・シュワルツェネッガー氏が、このうような
 ケツの穴の小さい行為をするはずがないことも申し添えました。

******

 このような解説をした後であり、いい機会ですので、
 いくつか用語について独断に満ちた解説をしておきます。

 用語の訳語は筆者によるもので、必ずしも、
 日本語としてピンとこない、
 発音をカタカナに置き換えたJOCの訳語には従っていません。

■Olympic(オリンピック)■

 オリンピック憲章では、「オリンピック」は独立した言葉として
 使用されていません。

 例えば、
 「Olympic Chapter」(オリンピック憲章)
 「Olympism」(オリンピック精神)
 「Olympic Movement」(オリンピック運動)
 「Olympic Games」(オリンピック大運動会)
 のように、オリンピック精神についての規定や具現化物について
 いちいち形容詞的に付すような使われ方をしています。

 従って「オリンピック」は、
 オリンピック精神についての規定や具現化物についての
 総体を表現した言葉であると定義すべきでしょう。

 但し、一般的には、使用する文脈の中で、
 「オリンピック」だけで個々の「オリンピック******」を
 意味させている場合も多く、略語の感覚でも使用されていると思われます。

■五輪■

 「五輪」は「Olympic」の訳語であると解説される向きもありますが、
 「五輪」は「Olympic」の訳語ではありません。

 「Olympic」は固有名詞又は固有形容詞であり、
 発音をカタカナに代えた「オリンピック」が訳語です。

 「五輪」は、一見「Olympic symbol」の訳語に見えますが、
 「Olympic symbol」も固有名詞ですので「オリンピック・シンボル」
 を訳語とするしかなさそうです。

 また「Olympic symbol」は、IOCによれば、
 視覚的には五大陸を意味するので、
 しいて日本語訳を当てるのであれば、
 「五大陸マーク」くらいが日本人に意味が通る訳です。

 従って、「五輪」は、
 オリンピック憲章の中のいかなる用語の訳でもありません。

 「オリンピック」が、
 オリンピック精神についての規定や具現化物についての
 総体を表現した言葉であるように、

 「五輪」は、
 日本文化に根差した発想で、新聞用語として発明された
 「日本人からみたオリンピック現象」を表現した日本語である、
 としか言いようがないと思います。

 IOCは、世界で自身のまき散らす「オリンピック現象」が、
 日本において、「五輪」という東洋哲学に根差した
 崇高な言葉で呼ばれていることに対して、敬意をもって、
 逆に欧米語に翻訳してもよいくらいだとすら思います。
 
■『五輪』は新聞用語として発明された■

 専門家の癖にこんな言い方していいのか、
 『五輪』を新聞用語にしたことのどこが発明
 (自然法則を利用した技術的思想)なのか、などという
 ケツの穴の小さい細かい疑問を持たれる方もいらっしゃる
 かと思いますので、念のため、解説しておきます。

 「発明」とは、確かに我国の特許法では「技術的思想」ですが、
 欧米では必ずしも「技術的思想」である必要はありません。

 『五輪』の話はグローバルに世界に発信されていますので、
 「発明」という言葉をひっかけても構わないでしょう。

 また、『五輪』を新聞用語として使用することは、
 1種のビジネスモデル的発明として規定しえますが、
 話せば長くなるので、興味ある方は筆者の論文を参照して下さい。

■アンブッシュマーケティング■

 IOCのような一部の国際的スポーツ団体がその防止を実践し、
 一部の研究者の研究対象になっている、要は、例えば、
 IOCが、自身の経済活動に非常に都合が悪いと考える
 第三者の営業活動という程度のことを意味する用語で、
 IOCは『アンブッシュマーケティング』に対して、
 IOCに正当権原がなくとも、
 IOCが差止警告ができると勝手に信じている商法です。

 『アンブッシュマーケティング』(ambush marketing)は
 『待ち伏せ商法』とか『便乗商法』とかに訳される場合もあるようです。

 しかし『待ち伏せ商法』では、日本人にはまったく意味が不明で、
 『便乗商法』は、日本語の意味自体は日本人にイメージできますが、
 『アンブッシュマーケティング』とは本質的に異なります。

 『便乗商法』は、
 人の尻馬に乗って、労せずして利益を得ようという
 さもしい根性が透けて見える一方で、
 そのために涙ぐましい努力をすることに共感してしまいそうになる
 哀愁の籠もる商法といえますが、それ自体は違法でも何でもありません
 (勿論、内容が違法であればそれは違法商売であるというだけです)。

 しかし、
 『アンブッシュマーケティング』はその商法自体に違法性がなくても
 IOCが正当権原なく差止警告できると勝手に信じている商法です。

 残念ながら、そのような違法性もないのに、
 IOCの主観だけで差止警告できる商法が存在する
 などということは法治国家ではイメージできません。

 開催都市契約第41条d)によれば、
 「OCOG は、商標権を含む(ただし、それには限定されない)
  本大会に関する財産の無許諾使用について監視するものとする。
  OCOG が、かかる無許諾使用が発生した、
  または発生しそうであることを知った場合、OCOGは、
  (@)その旨を即刻IOC に通知し、
  (A)IOC の要求および指示に基づき、当該無許諾使用
    (または、本大会に関する知的財産を侵害するその他の行為)
    を防止および阻止するために必要なすべての合理的な措置を
    即座に講じるものとする。」

 となっており、OCOG(組織委員会)は、
 オリンピック資産の無許諾使用を監視することになっています。

 ここに書かれるように監視対象は極めて曖昧で、
 大会ブランド保護基準によれば、オリンピックを連想させる
 映像・音声・マーク・用語・グラフィックまで
 アンブッシュマーケティングが疑われるとしています。

 画家・イラストレーターが、
 収入源の商品たる絵画・イラストにおいて、
 オリンピックを題材ととした創作を公表することが
 IOCによって禁じられかねないことになります。

 ここまでくると、憲法が保障する表現の自由を侵害する
 思想統制であるといわれても仕方がありません。

 『オリンピック精神』の根底に思想統制の趣旨があるとすれば、
 オリンピックのブランド価値は根底から崩れます。
 
 IOCや一部の研究者は、
 アンブッシュマーケティング規制が妥当であることを前提とした
 主張や提言をしているわけですが、
 筆者にはその根拠が全く理解できないので、最近は、
 『IOCの自称アンブッシュマーケティング』のように
 説明するようにしています。
posted by Dausuke SHIBA at 11:27| Comment(0) | TrackBack(0) | 五輪
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