2018年05月19日

『五輪』が危ない(1)

■シュワ氏■

 アーノルド・シュワルツェネッガーは、
 世界中で知らぬ人なき国際的大スターです。

 以下では、大変に恐れ多いことですが、日本流の親しみと敬意をこめて、
 「シュワ氏」と呼ばせてせてただきます。

 『コナン・ザ・グレート』で登場した若かりし頃のシュワ氏は、
 典型的なムキムキマンで、
 頭はついているだけでほとんど空っぽではないかという印象でした。

 しかし、シュワ氏の生涯の代表作『ターミネーター』を見て、
 私のシュワ氏に対する評価は一変しました。

 シュワ氏演じるT-800がロボットに見えたからです。

 『ターミネーター2』のロバート・パトリックのT-1000と、
 『ターミネーター3』のクリスタナ・ローケンのT-Xも、
 よくここまでやるよ、というくらいの完璧なロボット演技なのですが、

 シュワ氏のT-800は、シュワ氏の自然体のキャラクターのままで
 (要は演技しているようには全くみえないのに)、
 感情があるように見えて実はない無機質な物体の存在感が、
 皮膚感覚で伝わって、恐ろしく不気味でした。

 ムキムキ体型も、ロボットであれば何の違和感もないですよね。

 これを見て、私は、シュワ氏には中身の詰まった立派な頭がついていて、
 後にカルフォルニア州知事を立派に務めたことも納得できました。

 というわけで、私はシュワ氏とシュワ氏主演の映画の大ファンです
 (私の頭を空っぽにしてもらえるので)。
 
■シュワちゃん■

●仮想事例1
 国際的大スターであるシュワ氏には、
 大勢のマネージャーがぶら下がっていて、
 その中に日本担当の日本人の腰巾着マネージャーがいたとします。

 ある日、その腰巾着マネージャーがシュワ氏と立ち話をして、
 「日本人は長い名称を短縮して愛称にすることを好むので、
  日本人向けに「Please, call me SHUWA-chan」のメッセージを出して
  『SHUWA-chan』を流行らせたらどうでしょうか」
 という愚にもつかないくだらない提案をしたとします。

 その話を聞いたシュワ氏は、
 果たして、話の内容を理解していたのかいないのか、
 腰巾着マネージャーを見つめながらニッと笑って、
 「I'll be back」と言って歩き去ったとしましょう。

 そして、腰巾着マネージャーもその話はすっかり忘れ去って
 そのまま放置していたとします。

●現実
 そして数年後、『ターミネーター』シリーズの度重なる公開で、
 日本での人気が沸騰したシュワ氏が来日したあたりから、
 ファンの誰かが、シュワ氏を『シュワちゃん』と呼んだのをきっかけに、
 日本人の誰もがシュワ氏を『シュワちゃん』と呼ぶようになりました。

 かくいう私も、当初は、
 国際的大スターであるアーノルド(こんな風に呼んでみたかった)
 を『シュワちゃん』とは恐れ多い
 と違和感が充満しましたが、だんだん慣れてしまい、
 今では、シュワ氏の写真を見ると、
 「あ!シュワちゃん♡♡♡」と、頭の中で条件反射で呼んでしまいます
 (あの・・・おっさんずラブではありません)。

●仮想事例2
 この現実をみた腰巾着マネージャーが「だから言ったじゃないの」
 ということで、日本において『シュワちゃん』を、
 シュワ氏を示す商標として商標登録出願(以下「出願」)
 をしてしまった場合、これをどう考えたらよいでしょうか 
 (腰巾着マネージャーが出願したこと自体は特に問題ないとします)。

■出願商標『シュワちゃん』■


●法的観点
A.仮想事例1で、腰巾着マネージャーがシュワ氏の愛称戦略を実践して、
  シュワ氏が来日するたびに
  「Please, call me SHUWA-chan」と言い続けた結果、
  『シュワちゃん』がシュワ氏を示す愛称として広く知られる
  に至った場合は、仮想事例2の出願商標は登録されて、
  シュワ氏が、他人の『シュワちゃん』の勝手な使用を制限することは、
  妥当であり、ファンも納得するでしょう。

B.しかし、現実は、腰巾着マネージャーが愛称戦略を実践せず、
  第三者の『シュワちゃん』の使用を放置したまま、
  日本中で自由に使われた結果招来したものです。

  従って、『シュワちゃん』はもはや日本では、
  シュワ氏の愛称として普通名称化してしまったことになります。

C.特許庁はこのような普通名称化した商標、例えば、
  以下の略称は普通名称であるとして出願を拒絶します。

  ■ 商品「スマートフォン」について、商標「スマホ」は普通名称

  これに倣うと
  ■商品「アーノルド・シュワルツェネッガー」について、
   商標「シュワちゃん」は普通名称
  ということになるでしょう
  (なお、「アーノルド・シュワルツェネッガー」は芸名なので、
  シュワ氏を、この名を付された商品とみなしてもよいかもしれません
  (ここは精密な議論が必要です)。

●シュワ氏のブランド価値の観点
  天下のシュワ氏は、仮想事例2で腰巾着マネージャーの行った、
  ご自身が管理していたわけでもない略称『シュワちゃん』を
  商標登録して独占権を得よう、
  などというケツの穴の小さいことをするはずがありません。

  しかし、仮に、
  シュワ氏が本当にこのようなケツの穴の小さい出願をして、
  「悪いけど勝手に使わないでね」などとTVを通じて公言したりして、
  出願していることが知れ渡った挙句、
  特許庁に拒絶されたり、権利化後に無効にされたりしたら、
  ケツの穴の小ささが思い切りクローズアップされ、
  シュワ氏のファンは失望して離れていくでしょう。  

  即ち、シュワ氏が腰巾着マネージャーの出願行為を放置してしまうと、
  かえってシュワ氏のブランド価値が低下してしまうことになり、
  シュワ氏にとって百害あって一利もないことになります。

■五輪■

 IOCが、ひっそりと『五輪』を出願していることを、
 先のブログで報告しました。
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 『五輪』とは、70年ほど前に読売新聞の記者が発明した
 『オリンピック』現象の呼称であり、その後、我が国のあらゆる分野で、
 自由に使用されてきた結果、普通名称化された日本語です。

 『五輪』は、IOCのオリンピックのロゴ等である
 オリンピック資産のいかなる用語の「訳語」でもありません。

 おそらく『五輪』という日本語の称呼・外観・観念のどれをとっても、
 欧州文化圏のIOC自身はその意味すらピンと来ないはずです。

 従って、発生して70年間、IOC自身は一度も『五輪』を出願しておらず、
 『五輪』がオリンピック資産であることも主張していません。

 言い換えると、
 IOCは『五輪』を自己を示す商標として管理してこなかったのです。

 そうであれば、
 『シュワ氏』を『IOC』に、『シュワちゃん』を『五輪』に置きかえる、又は、

 『スマートフォン』を『オリンピック』に、『スマホ』を『五輪』に置きかえれば、

 上記の《出願商標『シュワちゃん』》での議論がそのまま成立し、

  ■役務「オリンピック大運動会の運用」について、商標「五輪」は普通名称

 ということになるでしょう。

******

 『五輪』についてIOCが商標権を取得すると、これまでの
 IOCの自称アンブッシュマーケティング対策の流れをみれば、、
 第三者のこれまで自由にできた『五輪』の使用を制限する差止警告を
 JOC及び組織委員会を通じてしてくることは確実です。

 『五輪』は日本人にとっては
 『オリンピック』とは重ならない文化的に多様な意味
 (典型的な『五輪書』のみならず)を含んでおり、
 日本文化としてもはや血肉化している日本語ともいえます。

 そのような日本文化の一部といってもよい日本語『五輪』を、
 オリンピック資産の名を借りて、商標制度を通じて、
 IOCが独占することは日本文化の破壊にもつながりえます。

 IOCには、『五輪』を登録商標として独占する行為が、
 オリンピック精神に合致しているのかについて真剣に考えないと、
 IOCの自称アンブッシュマーケティング対策として、
 日本語『五輪』の使用を差止警告などすれば、
 オリンピックのブランド価値を自ら傷つけることになる点を
 自覚すべきです。

******

 さらに、開催都市契約でIOCに対して、
 JOC及び組織委員会と共に連帯責任を負う東京都は、
 IOCの利益と都民の利益が相反する原因となりうる
 IOCの行動に対して、都民の利益に責任を負う地方公共団体として、

 組織委員会の顧問をする我国の主要閣僚は、
 国民の利益に対して責任を負う行政機関として、

 IOCとスポンサー契約を結ぶマスメディアを含む、
 『五輪』を発明して日本文化として定着させてきたメディアは、
 日本の言葉の文化に対する矜持と責任を全うすべき組織として、

 ここで紹介した『五輪』の危機的状況に対して、
 何らかのメッセージを表明すべきだろうと思うのです。
posted by Dausuke SHIBA at 15:02| Comment(0) | TrackBack(0) | 五輪
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