2017年09月10日

オリンピック憲章の翻訳文は早急に見直すべきではないか

 例年ですと、お客様が夏休みに入ると共に、私の仕事も夏枯れとなり、
 ブログをまとめて書いたり、腰据えて論文を書いたりするのですが、
 今年は、夏休みどころではないお客様の相談業務に忙殺されて、
 ようやくブログを更新する合間ができた次第です。

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 私は、本業の傍ら『東京オリンピックのロゴ等の知財管理』について
 気長に考察して論文にまとめたりしています。

 昨年(2016年)、弁理士会誌『パテント』6月号に、
 『公益性の観点からみた東京オリンピックのロゴ等の知財管理』と題して、
 IOC、JOC、組織委員会による、
 オリンピックのイメージ活用に対する差止め警告の法的根拠、及び、
 オリンピックのロゴ等の商標出願の在り方
 を中心にした論考をまとめました↓。
http://patent-japan.sakura.ne.jp/download/201608.pdf

 その続編の論考をまとめるに当たって、昨年末に、
 オリンピック憲章の知財関連規則の内容の経緯を調べるため、
 JOCのHPに掲載されるオリンピック憲章の原文と翻訳を読む機会がありました。

 オリンピック憲章は100年を超える間に幾度も改訂され、
 知財関連規則だけとはいえ、これは大変な作業になるなと
 正直ウンザリしながら作業を進めたところ、JOCの翻訳に、
 誤訳と受け止められても仕方がない夥しい数の箇所があることがわかり、
 ウンザリどころか大変なショックを受けてしまいました。

 そこで、この翻訳の問題を整理した上で、続編の論考をまとめて
 今年(2017年)2月に投稿した論文が、
 『パテント』8月号に掲載されましたので、知財関係者だけでなく、
 翻訳に関わる専門家、ビジネス英語、オリンピック憲章に興味をお持ちの方に、ご一読いただきましたら幸いです↓。
http://patent-japan.sakura.ne.jp/download/20170906.pdf

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 いつもは、『パテント』に掲載されたことだけを報告するのですが、
 今回は、上記掲載論文のさわりの紹介と少し意見を言わせてもらいます。

●以下の表をご覧下さい。

 左欄は、オリンピック憲章の知財関連規則の原文の改訂の推移で、
 右欄は、対応するJOCの翻訳の推移です。

 左欄の赤字は、原文の改訂箇所で、
 右欄の赤字は、JOCの翻訳の改訂箇所です。

20170128オリンピック憲章(資産と権利)-001.jpg

20170128オリンピック憲章(資産と権利)-002.jpg

20170128オリンピック憲章(資産と権利)-003.jpg

 これを見てわかることは、原文は改訂されていないのに、
 翻訳の改訂がされている個所が多数あることです。

 そのような個所が、単語レベルでも多いのですが、特に、
 2004年版規則7.1、及び、2013年版規則7.1〜4などは、
 原文の該当条項が全く変更されていないのに、
 翻訳は大幅な改訳がなされています。

 これらを詳細に調べると、
 改訳前の翻訳の方が適切ではなかったかと思われる箇所もあります。

●これを見ると、最新版のオリンピック憲章の翻訳文が、
 どの程度に信頼が置けるものなのか、と思わざるをえません。

 組織委員会の知的財産権の保護の原理原則を規定した『大会ブランド保護基準』が拠り所として掲載するオリンピック憲章7.4の翻訳文は↓、
https://tokyo2020.jp/jp/copyright/data/brand-protection-JP.pdf
 実際には2004年版オリンピック憲章7.2の翻訳文であり、
 看板に偽りありとみなされても仕方ありません。

 また、今年になってようやく公表された、
 2020年東京オリンピックの運用及び費用について取り決めた
 IOC、JOC、組織委員会及び東京都の間で締結された開催都市契約も↓、
https://tokyo2020.jp/jp/games/plan/data/hostcitycontract-JP.pdf
 オリンピック憲章の知財関連規則を基礎としているのですが、
 この参考訳をどこまで参考にできるのか、とも考え込んでしまいます。 

●JOC及び組織委員会は共に公益財団法人であり、
 組織委員会は都の幹部が役員に入り、
 首相を始め政権の中枢の政治家が顧問団を形成しており↓、
http://patent-japan.sakura.ne.jp/page-113.html
 2020年東京オリンピックは国家的事業として、
 多額の税金が投入されることが確実な状況です。

 東京オリンピックで来日する外国人観光客のおもてなしを、
 ボランティア通訳で賄うなど、安上がりなことを考えるだけではなく↓、
https://www.omotenashi-volunteer.net/
 全世界に公開し続ける、
 オリンピック憲章のこのような誤訳の歴史ともいえるような翻訳を、
 経済大国に相応しい費用をかけて、
 我国の最高水準の翻訳に変えることに注力して欲しいものです。
タグ:五輪
posted by Dausuke SHIBA at 11:26| Comment(0) | TrackBack(0) | 五輪
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