2019年03月24日

オリンピック関連登録商標の違法ライセンス疑惑(4):2019年3月20日参院法務委員会での小川議員の質疑に対する政府答弁を分析する(その2)

 2019年3月20日の参院法務委員会での、小川敏夫議員(立憲民主党)による「JOCによる商標法31条の禁止規定に違反した通常使用権許諾について」と題した国会質疑は、わずか20分の短時間でしたが、極めて重要な事項が明らかとなりました↓
https://www.youtube.com/watch?v=c-piTW48Uio(51:15〜1:15:30)
https://twitter.com/OgawaToshioMP/status/1108238785207132160

〔前回と今回の分析内容〕
前回
 小川議員は、一貫して、以下を政府に問いただしました:
 「組織委員会の登録商標であるエンブレム等のライセンス契約は
  違法ではないか」

 政府は、組織委員会の登録商標であるエンブレム等のライセンス契約は
 合法でであるとの立場で、以下の回答をしました。
A.組織委員会から、
  スポンサー企業等は適切な契約の下で合法的に使用している
  との報告を受けている。

B.政府は、組織委員会の報告の内容に問題はないと考えている。

C.組織委員会とスポンサー企業等との
  登録商標であるエンブレム等のライセンス契約が合法である
  と考える理由
  @商標法に基づくライセンス契約ではなく、
   著作法・民法に基づくライセンス契約である。
  A商標法に基づくライセンス契約ではなく、
   商標法に基づく差止請求権不行使の契約である。

 前回は、政府の回答Cが極めて拙劣で、
 当該ライセンス契約が合法である理由には全くなっていないとして
 小川議員がどのように論破したかを説明しましたが、このことから、
 「ご飯論法」答弁でである、
 回答Aの組織委員会が合法的に使用しているとの報告内容と、
 回答Bの政府がその報告内容に問題がないという判断とは、
 根拠のない間違ったものであることも明らかになりました。

今回
 政府は、以下のような「ご飯論法」答弁もしていました。
D.本件ライセンス契約は、民間団体と民間企業の私契約の問題であり、  
  政府として特段深く関与すべき問題ではないという認識である。

 回答Dは、小川議員の質問に直接答えていませんが、
 相当に問題のある答弁ですので、今回は回答Dについて分析します。

〔回答Dの分析〕

IOCのライセンスビジネス
(1)登録商標のライセンス契約
 IOCは、オリンピック競技会の巨額な運用資金を捻出するために、
 オリンピック資産をライセンスして協賛金を集める
 ライセンスビジネスを積極的に行っており、
 オリンピック憲章規則7.4で、その旨を宣言しる:
 「規則7:オリンピック競技大会及びオリンピック資産に関する権利
  規則7.4
  ・・・
  オリンピック資産に対する
  全ての権利及びそれらを使用に対する全ての権利は、
  IOCに独占的に帰属し、
  営利、商業又は宣伝広告のいかなる目的のための使用
  に対するものも含むがそれらに限定されない。
  IOCはその権利の全て又は一部をIOC理事会の定める条件で
  ライセンスをすることができる。」

 東京オリンピックでは、IOCと組織委員会は、
 ライセンス契約に伴う協賛金の規模に応じて、
 以下のようにスポンサー企業を分けて管理している。
 IOCと直接契約する世界パートナー;及び
 組織委員会と契約する国内パートナー。
ライセンス契約.jpg

 現状、ライセンス契約により集めた協賛金は、4千億円に迫るようである
 (小川廣男「オリンピック・パラリンピックとHACCP,そして知財
  (「パテント」2018年12月号))。

(2)アンブッシュマーケティング対策
 IOCは、スポンサー企業の登録商標を使用した営利活動を、
 商標権等に基づき守るため、スポンサー企業以外の者が行う
 オリンピックを想起する活動
 (IOCは「アンブッシュマーケティング」と呼んでいる)
 を抑えこむアンブッシュマーケティング対策をとることを
 表明し、JOC及び組織委員会を通じて、
 現に決して評判がよいとはいえない牽制活動を積極的に展開している
 (組織委員会「大会ブランド保護基準」、
  友利昴「オリンピックvs便乗商法」(集英社))。

政府保証と開催都市契約
 東京都が2020年夏季オリンピックの招致をした際に、
 IOCの種々要請に対する東京都の回答をまとめた立候補ファイルを、
 IOCが求める政府保証を添付して、IOCに提出している。
政府保証.jpg
 IOCに対する政府保証は、
 新聞等のマスメディアでは財務保証が話題になるが、
 知財関係も含めて、各担当省庁が種々保証をしている。
 その中で、
 内閣官房(内閣総理大臣)はオリンピック憲章の遵守を、
 経産省は法的側面であるアンブッシュマーケティング対策の完備を、
 それぞれ保証している。

 ******

 東京都が2020年夏季オリンピックの開催都市に決定した際に、
 IOCが甲、東京都・JOC・組織委員会が乙として締結した
 開催都市契約は、
 IOCが上述のライセンスビジネスを実施すること(序文B及びC)、
 上記の政府保証を前提として、
 オリンピック憲章と開催都市契約を遵守すること(序文G)、及び、
 アンブッシュマーケティング対策を乙の責任で実施する条項(41条a))
 が含まれる。

回答Dについて

 政府(十時憲司内閣審議官)の回答Dは、
 組織委員会の登録商標であるエンブレム等のライセンス契約は
 組織委員会とスポンサー企業が締結した私的契約なので
 当局は一切関知しないからそのつもりで、という内容である。

 しかし、このライセンス契約は、上述したように、
 IOCのライセンスビジネスの中核事業であり、
 IOCから合法的に実施できるように、
 IOCに対して政府保証しているのであるから、
 「政府として特段深く関与すべき問題ではない」などとは
 言えないのである。

 我国で勃発した違法ライセンス問題に対して、
 政府がIOCに対して「回答Dのように対応しました」
 などと報告すれば、IOCは激怒するのではないだろうか。
 
〔まとめ〕
 不正統計問題では、ご飯論法を駆使して、責任の所在を、
 官僚の不適切な行動に求める(平たく言うと「官僚になすりつける」)
 ことができてしまい、政府の関与が見え難いといえる。

 違法ライセンス問題では、ご飯論法を駆使して、
 政府と組織委員会が
 「このライセンス契約は合法であり、
  政府はこのライセンス契約には関知しない」
 と言ってしまうと、それではその根拠は何かと追い詰められて、
 法的根拠が見いだせないことが顕在化し、
 政府保証に行きついてしまう結果、
 東京オリンピックに関する国際的契約の不履行の問題が顕在化し、
 政府の責任が極めて大きいという結論に行きついてしまうのである。

 違法ライセンス問題は、幸か不幸か、
 IOCファミリーのライセンスビジネスの実態が、
 隠蔽されることなく、組織委員会のHPや、巷の身近な事象として
 全国民の目に触れることができてしまうので、
 ご飯論法であまり変なことは言わない方がよいのである。

 政府とIOCファミリーが、このとてつもなく大きな問題に
 正面から取り組み、解決の手立てを模索することが、
 国民を含む関係者への種々不利益を現状以上に拡大しないための
 知的財産トラブル対策の正道であることを、
 知財コンサルティングの観点からアドバイスする。
posted by Dausuke SHIBA at 10:26| Comment(0) | TrackBack(0) | 五輪